採用する外国人労働者が決まったら、雇用条件を説明するために、労働条件通知書または雇用契約書を作成します。その後に在留資格の取得手続きが必要となります。
労働条件通知書
労働条件通知書は、労働基準法15条に基づいた事項を企業が労働者に通知(明示)するための書類です。特に署名捺印等は必要ありません。
雇用契約書
雇用契約書は、使用者と労働者双方で押印または署名し、契約を締結するものです。労働条件通知書と違って、使用者と労働者双方で確認された合意的な文書と認められるものとなります。記載する内容については、労働基準法15条に基づいた労働条件の明示の事項を羅列する必要があります。
なお、雇用契約を正式に成立させるために、「雇用契約書」という書面の作成が絶対に必要なのか
という問題がありますが、結論から申しあげますと「不要」というのが正解になります。日本の民法では、契約の成立に書面などの「形式」を必要としない「意思主義」を基本としていますので、雇用契約も、原則として口約束だけで契約は正式に成立するからです。
しかし、労使間で何らかのトラブルが発生してしまった場合に「そんな書面はもらっていない」というような形で争いになってしまうことがあります。そのようなトラブルを防ぐためにも、「この内容で契約が成立している」ということの動かぬ証拠となる「雇用契約書」を作成することをお勧めします。
会社と社員がそれぞれ保管できるように2部作成し、雇用契約書の社員の住所や氏名の欄は、あらかじめ会社がワープロ打ちするのではなく、本人に直筆で記入してもらうようにします。
雇用契約書を作成すれば、労働基準法で求められている書面による労働条件の明示も自動的に兼ね
ることができます。会社が一方的に交付すれば良い労働条件通知書に比べ、雇用契約書では「2部作成する」「署名押印を取り交わす」といったように、手間が増えますが、労務管理上のリスクを減らすためにも、雇用契約書は取り交わしておきたいところです。
実務上は「労働条件通知書兼雇用契約書」というタイトルで書面を作成することも多いです。
なお、雇用契約書と労働条件通知書の違いは、署名捺印の有無と言えます。
労働条件通知書は、企業から労働者への通知の意味合いがあるのに対し、雇用契約書は、企業と労働者の双方が署名捺印等を取り交わす合意書であることに違いがあります。
労働基準法15条(労働条件の明示)
労働者を採用するときは、以下の労働条件を明示しなければなりません
原則、書面で交付しなければなりませんが、労働者が希望した場合は、FAXやWebメールサービス等の方法で明示することができます。
必ず明示しなければならないこと
原則、書面(※)で交付しなければなりません。
① 契約期間に関すること
② 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③ 就業場所、従事する業務に関すること
④ 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
⑤ 賃⾦の決定⽅法、⽀払時期などに関すること
⑥ 退職に関すること(解雇の事由を含む) ⑦ 昇給に関すること
定めをした場合に明示しなければならないこと
① 退職手当に関すること
② 賞与などに関すること
③ 食費、作業用品などの負担に関すること
④ 安全衛生に関すること
⑤ 職業訓練に関すること
⑥ 災害補償などに関すること
⑦ 表彰や制裁に関すること
⑧ 休職に関すること
在留資格の取得手続き
雇用条件を説明するために、労働条件通知書または雇用契約書を作成した後は、次に、採用する外国人労働者のために在留資格の取得手続きを行います。
外国人労働者とは言っても、留学生から新卒で会社に入社したり、既に日本で別の会社にいて、転職で入社したり、さらに外国から初めて日本に来て入社する等、様々な形で入社してきます。
それぞれどのような在留資格の取得の手続きをしたらよいのか、大きく4つのパターンに分けて、まとめたのが、下記の表となります。