給与・報酬について

労働基準法3条に、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定められています。

外国人労働者の給料は昇級なしで、日本人の給料は昇級ありにするなど、国籍によって、労働条件や賃金形態を分けることは許されないことになります。

1 月給制と年俸制
日系の企業の多くは月給制を採用しています。近年では、ようやくグローバル化の進展によって、年俸制を採用する企業も増えてきました。外資系の企業では一般的に年俸制を採用しています。
それぞれの特徴と、メリット・デメリットについては以下の通りとなります。

月給制は、毎月基本給が支払われ、そこに一定の手当が付きます。基本給の金額に特に影響しやすいのは、各社員の年齢や勤続年数です。それに加えて、会社の業績や本人の成果に応じて夏季・冬季の賞与(ボーナス)が発生し、最終的な年収が決まります。

年俸制は、給与の金額を1年単位で決定します。成果主義を基礎として生まれた給与形態で、金額に影響するのは仕事の成果や個人の能力です。

 

月給制と年俸制のメリット・デメリット
月給制のメリットは安定した給与が支給されることです。デメリットとしては、年俸制のように、実力に応じた飛躍的な給与アップが起こりにくいことが挙げられます。

年俸制のメリットは、1年間に支払われる金額が決まっているため、企業は長期的な計画が立てやすくなります。デメリットとしては、従業員は、常に成果を求められることから、プレッシャーの大きさに耐えられず、かえって仕事に向かうモチベーションが下がってしまうリスクがあります。

 

2 年俸制を導入する場合の注意点
毎月1回以上払いの原則
日本では、労働基準法第24条においては、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとされています。
いわゆる、賃金支払いの5原則により、賃金は毎月1回以上支払うことが定められているため、年俸制とは言っても、一括で支払うことは出来ません。そのため支給方法としては、12分割して毎月支給するか、16分割して2カ月分の金額を夏季・冬季の賞与として支給するか等の方法がとられています。

時間外手当の支払い
年俸制の場合、時間外労働であっても時間外手当を支払わなくてもよいと考えている企業もあるようですが、それは間違いです。時間外労働が発生した場合、決められた年俸額とは別に、実際の時間外労働や深夜残業、休日出勤等に応じて、時間外手当、深夜残業手当、休日出勤手当などを別途支払う必要があります。

固定の時間外手当込みで、年俸を決めている場合は、基本給の額と、固定の時間外手当を分けて給与明細や賃金台帳に表示しておく必要があります。また、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働をした場合は、超えた部分に対して割増賃金を追加で支払わなくてはなりません。その旨についても、きちんと記載しておく必要があります。

<時間外労働について固定残業代制を導入している場合の記載例>
(1) 基本給 XXX円((2)の手当を除く)
(2) 固定残業手当(時間外労働の有無に関わらず、□時間の時間外手当としてXX円を支給)
(3) □時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

割増賃金の計算
賞与を含めて年俸額を確定している場合、賞与も賃金の一部とみなされるため、時間外労働の割増賃金の基礎となる賃金に含めます。具体的には、賞与を含めた年俸額を12で割って、その額を月給とみなして時間外手当の計算をします。

具体例:年俸500万円
(1)月給:年俸の16等分で31万2500円
(2)賞与:月給の2か月分(62.5万円)ずつ年2回支給(合計4カ月分で125万円)
としている場合の、残業代については、月給の31万2500円ではなく、500万円÷12=41.7万円を月給とみなして時間外手当を計算することになります。

 

3 Signing Bonus(サイニングボーナス)
雇用契約書にサインすることを条件に支給されるSigning Bonus(サイニングボーナス)と呼ばれるものがあります。転職により、その求職者が元の企業で賞与を受けられなくなることの補填としての意味もありますし、入ってから頑張って仕事をしてもらうための支度金の意味合いもあります。
一般的には、入社前に支給する場合は、それは給与ではなく、契約金の扱いになるので、社会保険料徴収の対象にはなりません。入社後に支給されると、それは賞与的な扱いになり、社会保険や雇用保険の対象となります。支給時期や支給目的により、対象の判断が難しくなるケースもあるので、個別に確認が必要と言えます。

Signing Bonus(サイニングボーナス)導入の注意点
Signing Bonus(サイニングボーナス)を支給して、短期間で辞めてしまうケースも考えられます。
そうしたリスクを避けるためにも、Signing Bonus(サイニングボーナス)は、入社して一定期間が経過してから支払うなどのルール作りも必要かもしれません。

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アジアの一部の外国人の間では、お互いに給与明細を見せあう習慣があります。同じ仕事をしているのに、彼はあんなに給料をもらっているのに、私はこんなに少ないのはおかしいと説明を求めてくる人もいるようです。こうした事態を避けるためにも、企業としては評価制度や基本給・時給などの決定方法などを統一して、従業員にきちんと説明して、理解を得ておくことが必要でしょう。

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