◎技能ビザ(外国人の調理師)

技能ビザ(外国人の調理師)

 

「技能」の在留資格は、日本の国際化の進展に対応して、熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられたものであり、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動が該当します。

産業上の特殊な分野
外国に特有の産業分野のほか、我が国の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野、我が国において従事する技能者が少数しか存在しない産業分野などが該当します。

熟練した技能
個人が自己の経験の集積によって具有することとなった技能が熟達の域にある能力を言います。

 

例としては、外国料理の調理師、外国特有の建築土木の大工、スポーツ指導者,航空機操縦者,貴金属・毛皮の加工職人、動物調教師等が挙げられます。

 

特に、「技能」のビザを取得するケースで多いのは、外国人が調理師としての活動(熟練した技能を要する業務に従事する活動)を行おうとする場合です。いわゆる、外国料理の調理師(コック)のビザです。

具体的には、中国料理、韓国料理、タイ料理、ベトナム料理、インド料理等の専門店で働く外国人調理師等が対象となります。

 

1 調理師に係る「技能」の審査ポイント

(1)外国人本人に専門料理店での実務経験が10年以上あること
※外国の教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間を含みます。

 

タイ人の調理師(コック)の場合、次の要件を満たす必要があります。

年以上の実務経験を有していること
◆初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得していること
タイ労働省技能開発局が実施するタイ料理の調理師国家資格は、レベル1とレベル2(上位)がありますが、レベル1の資格をもっていることが必要とされます。
◆日本国への入国及び一時的な滞在に係る申請を行った日の直前の1年の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬を受けており、又は受けていたことがあること

調理師としての実務経験は在籍証明書などで証明します。

在籍証明書は、過去の勤務先から取得します。そこには、店名(会社名)、電話番号、住所、職種、実務経験年数が記載されている必要があります。

 

中国人の調理師(コック)の場合は、

戸口簿、旅券、職業資格証明書等で職業を確認します。職業が調理師である場合は、職業欄に、「厨師」、「烹調師」等の調理師としての記載がなされています。

中国の職業資格証明書は、調理師をはじめとする各種資格を要する職業を証明する証明書であり、
調理師については、職業欄の記載として、「中式烹調師」及び「中式面点師」があります。5つの等級がありますが、初級(国家職業資格5級)では、10年以上の実務経験により修得が可能なレベルの技能を有しているとは言えず、産業上の特殊な分野」に属する熟練した技能を要する業務に従事するとは認められません。

 

ネパール人の調理師(コック)についての注意点

申請人が、以前在籍していたお店が発行した在籍証明書と、同証明書を発行したお店に係るPAN(Permanent Account Number)登録証明書(同証明書に記載によって、お店が営業を開始した日がわかります。)との整合性が審査され、例えば、PAN登録証明書に記載された営業開始日より前に、申請人が店舗で勤務したという矛盾が生じると、10年以上の実務経験の存在についての信ぴょう性に疑義が生じ、不許可になります。

実務経験については、申請人の外国人が、本当にその店舗で働いていたのかなど、出入国在留管理局は、お店に国際電話により確認をするほか、現地の日本大使館も各種調査をするなど、しっかりと調査しています。 店舗が倒産していたなどで実在していなかったりすると、そもそも在籍証明書が出ていないこともあり、実務経験の証明が出来ないため、やっかいです。

また、店舗は実在していて、連絡はしたものの、店舗に新しく入った人が電話に出て、「そんな人は知らないよ」と言う可能性もあるので、ビザを申請した際は、可能ならお店の支配人などに前もって事情をお話し、連絡がいくかもしれない旨話をしておいた方が宜しいかと思います。

 

(2)事業所の規模
調理師の技能を十分に発揮できる規模の事業所、店舗が確保されていることが必要です。(お店の見取図が重要)

なお、事業所、店舗に係る賃貸借契約書の借主名義や営業許可証の名義が、「技能」の在留資格を有する調理師となっている場合は、不許可になる可能性が高いので、十分注意してください。

店舗の規模は、座席数が30席以上あれば基準をクリアできます。
テイクアウトのみの店舗でも許可の可能性がないわけではありません。

日本で勤務するレストランの厨房や客席、外観、コース料理の写真なども提出した方が良いと思います。
(申請人が勤務している様子が映っている写真が望まれます。)

 

(3)従業員
店舗において、調理師以外に食器洗い、ホール係、会計等の専従の従業員がいることが必要です。         それらの従業員がいない場合、調理師が、兼務でそれらの仕事もするのかと判断され、不許可になります。

そのため、調理師に係る「技能」の申請においては、従業員ストの提出を求められることが多いです。

 

(4)料理の内容
熟練した技能を要する料理品目がメニューの相当数を占めていることが必要です。
例えば、味噌ラーメン、ちゃんぽん、皿うどんなどは、起源は中国ではあるものの、その後、日本で高度化し、日本において特殊なものとは言えないため、「熟練した技能を要する料理品目」に含まれません。

5000円以上のコースメニュー等があり、かつ単品料理が揃っていると、有利に判断されます。

 

2 技能ビザの取得方法(外国人調理師・コック)

技能ビザは、取得要件として10年以上の実務経験が必要であるため、調理専門学校を卒業した新卒の外国人がいきなりビザを申請することはできません。
となると、実務上、外国人調理師・コックさんを雇用するためには、

①海外から実務経験者を招聘する
②既に日本国内で働いている外国人調理師などを中途で採用する方法しかありません。

 

①の場合は、海外からの招聘なので、「技能」の在留資格認定証明書の交付申請をすることになります。

②の場合は、本人にとっては転職となるので、転職した場合の入管手続として、「所属機関(契約機関)の関する届出」が必要となります。事由が生じた日から14日以内に法務大臣に届出する必要があります。

転職者本人の在留期限がまだ十分に残っている場合には、就労資格証明書の交付申請をすることをお勧めします。現在所持する技能ビザは、前職の店舗で働くという前提で出されているものなので、転職した店舗で適法に働くことができることを証明する必要があります。

在留期限がほとんど残っていない場合には、就労資格証明書の交付申請をせずに、在留期間の更新申請の際に転職後の店舗情報等を提出し、許可をもらうことになります。

 

3 就労資格証明書制度を是非とも利用しましょう!

繰り返しになりますが、現在所持する技能ビザは、前職の店舗で働くという前提で出されているものなので、在留期間満了時にとる更新手続は、転職しない場合の更新手続と比べて、立証資料も多く要求され、前職の退職証明書の提出も求められます。審査にも時間がかかります。

そうした負担がかかっても、最終的に更新許可が出れば良いのですが、仮に不許可になってしまった場合、在留資格が出国準備のための「特定活動」に変更され、就労活動が一切認められなくなり、せっかく決まっていた転職先で、就労を継続することができなくなってしまいます。

このような思わぬリスクは避けたいですし、出来るだけ更新手続を容易にするためにも、就労資格証明書の利用は是非ともお勧めしたいところです。

 

何か、ご不明な点がございましたら、是非一度、Beyond行政書士事務所まで、ご相談ください。

 

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